新しいカタログの最終入稿の日と、その前日、スタッフはデザイン室に
こもりきりだった。

若杉さんは、文字自体・フォントにこだわり、写真にもこだわる。
二村さんは、主に商品のサイズに間違いないか、伊藤さんは、金額に、
大久保さんは、商品と品番が合ってるか注意して見る。
  
私はキャプション担当で、単語が途中で改行されるのがイヤだ。
  
2日徹夜している若杉さんをはじめ、皆 少ない睡眠時間なのは、
充分知っている。でも、言わずにはおれない。

特筆すべきは、このような張りつめた空気のなかでも、声を荒げて
発言する人が、一人もいないところだ。
  
「これ、直して下さい。」と言う方もつらい。だが、
「はい、わかりました。」と事も無げに進んでいく。
コーディネーターの先生も、驚く精神力だ。
    
「差し入れ!」と、元気よく、専務が登場。
「お茶入れて。」と言いつつ、誰よりも先に、いちご大福をほおばる。

”少々間違いがあっても仕方ない、はいはいお疲れさん。”
というムードを、一人で醸し出している。
この部屋では、完全に異質の存在だ。

皆も、一様になごんで休憩に入ったが、すぐに戻って続けた。
 
広告代理店、自社制作、と隔号ごとに繰り返して、カタログを作ってきた。
今回、2度目の産みの苦しみを味わっている。
 
本当は、大きな声で言いたかった。
「なんで、こんなに時間がない!?どうして、いつも逆算出来ないのだ!」

2003.0208