お食事をしてから美術館へ行きましょうと、ひとつ年上のTさんか
ら、お誘いを受けていた。
彼女は着付けの免状を持ち、ご自分でも縫われるほどの着物好きな
ので、私にも着物でとおっしゃる。どうにか着終わった頃、迎えに
来てくださった新車のプリウスが停まった。
1リッターで20キロ走る静かな近未来カーと、彼女の白大島、私は
濃鼠色の御召という取り合わせは、なかなかオツではないかしら。
「壺中庵」の女将兼板前は、妹の友人だ。久しぶりに会った彼女は、
両方の役とも立派にこなされていた。唐長の襖に囲まれた和室に、
椅子のスタイルは珍しい。京仕込みのお料理と、土鍋で炊いたご飯
はとても美味しかった。器も土鍋も、彼女が作ったという。
滋賀県立近代美術館の催し物は、「染め・織り・竹・陶の美」。
特筆すべきは、陶芸の清水卯一と染めと織りの志村ふくみだ。
2/18にお亡くなりになったからか、清水卯一の作品はかなりの展示
数だった。やや稚拙ともみえる大胆な壺から、繊細なラインの天目
釉の水差し・碗の幅広いバリエーションに、高度な技術と無邪気で
奔放な感じを同時に受けた。
志村ふくみの著書で覚えはあったが、「花の咲く前の梅や桜の木を
燃やし灰にして、熱湯に漬けた灰汁からピンク色が染まる」作業に
は驚く。花になれなかった色素の精が、灰に残るというのか。また、
草木から緑の色素の出ないのも不思議だ。緑色は、黄色に染めた後
藍をかけるらしい。染め・織りはロマンティックな手仕事だと思う。
よく晴れた一日、心身共に滋養を得た感じ。
2004.0328