MG-MIDJETを運転して、彦根から敦賀までR303からR8を北上する。
運転席を一番前にして上着を敷いても目線は低い。長時間乗ると、
クラッチを踏み込む左足が攣りそうな気がする。
雨上がりの草や川や田んぼの匂い・賤ヶ岳を越えると山陰の苔むし
た匂い・福井県に入ると山間の湿度などを感じる。やがて日本海の
磯の香りがする。風と匂いと音にバイクに乗っていた頃を思い出す。
30秒以上ローで走るのは嫌だ。セカンドからサードへ切り替える。
まだトップに入れないの?と声が掛かるが、時速30マイルではね。
加速しながらウインカーを右に出し、前を走るロータス・スーパー
セブンを抜いていいかと尋ると「先頭を抜いたらアカン」と云われ
る。だから私は団体行動がキライだ。緩急自在に走りたい。
敦賀で昼食。生ビールを注文したMGBに乗る歯科医の視線を感じ
る。半分飲んでからコップの氷水をジョッキに足したのだ!「量が
欲しいんだ。」不味そうなので見ないようにして食事を済ます。
小浜へは、世久見・食見・須の浦など幾つものトンネルをくぐる。
「患者が産気づいてはいけないので、車庫から離れたところでエン
ジンを掛けて来た」と云った産婦人科医が乗るルノー・アルピーヌ
の黄色のバックランプが、昆虫の目のように光っていた。
再び、小浜から今津への”鯖街道”を運転する。右手一面に広がっ
た麦の秋を経て、杉が林立する山道に入る。薄紫の花ベニバナトチ
ノキと白い花のガクウツギが、翳りかけた山林に明るく映えていた。
ドラム式ブレーキの効きのあまさを怖く思ったが、この車のエンジ
ン音とモト・リタのハンドルは好きだ。ほどよく疲れた一日だった。
2004.0528