ホテルを出て2分も歩かないうちに「奥野ビル」の前を通る。
この4Fにある”銀座ギャラリー1丁目”の素敵な女性オーナー、
真木さんに会いたくなって階段を上がる。

このビルは階段を挟んで昭和7年と8年に建てられたアパートで、
かつては西条八十・佐藤千夜子などが住んだそうだ。壊すのに費用
が掛かかりすぎるため、2年前にギャラリーが入るようになった。

驚くのは、今も当時からの現役住人が一人(常磐津のお師匠さん)
いらっしゃることだ。地下に共同浴場があることなどからフランク
・ロイド・ライトがアルバイトで設計したというが、本当だろうか。

歩行者天国となった銀座から、目黒へ向かう。

東京都庭園美術館で「田原桂一 光と彫刻」を観る。知っているの
は、京都生まれで「アンジェリズム」のオーナーというだけだ。
それが”写真家”と書いている!無知にはいつも新鮮な驚きがある。

ヨーロッパ写真館のモンテロッソ氏は「伝統的な写真家は被写体を
捉まえ、照らし、被写体に仕えるために光りを与えるが、彼の場合
は逆に被写体が光りを仕えることになる」とある、以降読み飛ばす。

ガラスや石灰石や布に印画することによって、ロダンの彫刻の手足
や顔のトルソーが生き生きと甦って見えるのが素晴らしい。

汚れてたり曇ったガラス窓から見える、小さく切り取られた景色や
差し込む光。若い頃の屋根裏部屋から撮った『窓』シリーズは、私
の好きな世界だった。同じく人物写真も良かった。

ピエール・クロソウスキーとフィリップ・スーポーって何者だろう。
あんないい顔を見ると、タダのハンサムは薄っぺらく映る。

2004.1218