まるで初夏のような日差しの京都市内を抜けて、北白川から山中越
えに入り比叡山ドライブウェイのゲートをくぐる。
中腹に、一見平屋建てのホテル「ロテル・ド・比叡」がある。
一組のカップルと、足を伸ばして眠っている年配の男性がひとり居
るだけのロビー。左に琵琶湖を臨み右に京都市内の街並みが見える。
霞んだ琵琶湖を眺めながら、テラスで紅茶をいただく。
ひんやりとした空気とベルガモットの強い香りを鼻腔に感じる。
目の前の若葉の枝に、飛んできたホオジロが留まって鳴いた。
傾きかけた太陽が、夕焼けになる前のひととき。
”何もしないポカンとした休暇”のほんのエッセンスだけを味わう。
少し肌寒いなと思った時、ホテルの方がブランケットを持って来て
くれた。気楽な別荘をイメージしているためドアボーイはいない。
けれどこんな風に気配りをしてくれるスタッフはたくさんいるのだ。
雑誌に載っていた”今年2月フランスから帰国後、料理長に就任し
た中村健介”のレストランに灯りがともる頃、駐車場へ向かった。
急なヘアピンカーブを西大津へ下る。降りるに連れて夕日がオレン
ジ色を増し、大気の水蒸気に拡散して辺りをやわらかく染め出した。
山桜の薄いピンク色の花びらが風に吹かれて落ちる。ゆっくり舞う
ものは透き通って見える。カーブの吹きだまりに、落下した無数の
紅い椿。その上に桜の花びらが幾重にも重なっていく。
坂本の湖面は、駘蕩とした光に揺らいでいた。
信楽はつい先頃まで遅霜の降りる日があった。花が一斉に咲き出し
たのはごく最近だ。今日は春が凝縮されている、と思った。
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2005.0418