梅雨といえど毎日よく晴れる。予定通りにカタログ撮影に入った。

若杉さんがロケハンしておいたフランス料理店には、休みの日に友
達とランチに行った際、私が申し込んだ。若いオーナーシェフは、
気持ち良くOKしてくださった。

テラスに、オリーブの木を植えたシェーブプランターを置く。肉眼
では良い感じに見えても、レンズを通すと寂しい画面に感じること
が往々にしてある。ショベルやエプロンなどの小道具は不可欠だ。

『オープンカーで花苗を買って来てこれから植える』の場面も、無
人だと説得力に欠けるので”後ろ姿で入れ”と言われる。並川先生
のつば広の帽子を借りて運転席に座る。帽子は、パリのマダム風だ。

フツウに後ろを振り向くポーズ、つまり日常の動作は、画面で見る
と美しくないと知る。無理な姿勢と緊張感のある指先でないと絵に
ならないらしい。カメラマンの指示で、異常なほど体をねじ曲げる。

場所を移動し、白いコンクリートの壁にパイナップルの鉢を並べる。

「太陽の光で、葉陰の黒とのくっきりとしたコントラストが面白い」
「南国を思わせるね」など、口々に自画自賛しながら撮影は進む。

予定のカットを撮り終え、近くの喫茶店で写真をスライドで見てい
ると、隣席に8名の家族連れが座った。

そのうちの一人を見て「ミキティに似てる!」と囁いたら、若杉さ
んが「本物の安藤美姫ですよ」と断言した。近くにアイスリンクが
あるから帰りかなぁと二村さんも言う。

「誰?誰?名古屋のDJか?」と専務が話題に入ってきた。どうやら
兵藤ゆきと勘違いしているようだが、3文字しか合ってないね。

2005.0628