美術館を楽しむためにはどうすればいいか、野地秩嘉が千住博に尋
ねた本がある。ナビゲーターがいると数倍楽しいらしい。
今日は私も、メアリーさんと40年以上一緒に蒐集され、現在はメト
ロポリタン美術館特別顧問の村瀬実恵子さんの解説を聞ける。
講演の前に、思いがけず近くに座られた陶芸家の辻村史朗さんと話
す。辻村さんに「高台の切り方が好きです」と言ってしまい、すぐ
後悔した。褒める処がここしかないように聞こえたかなと・・・。
辻村さんは、”いい手をされている”という印象が残った。
メアリーさんが吉村順三から日本家屋や庭園を学ばれたこと、文化
庁とのやりとり、彼女の確かな眼、扇流図屏風76の不思議、心に残
る購入時の経緯などとても面白く、2時間の講演は瞬く間だった。
辻村史朗さんのお付きの人から彼のN.Y版図録をいただき、ひとり
でコレクション会場へ向かう。
書画はともかく、アメリカ人である彼女が、伊賀焼の破れ壺の水差
49と志野茶碗などに美を見出したことに驚く。また、あまり知られ
ていない美術品に今までにない新鮮さを感じた。
特に、酒井抱一の33才で亡くなった養子・酒井鶯蒲の「六玉川絵巻」
96は、縦幅9cmの小ささである。綺麗な色の川、人や花が繊細に描
かれ、草むらに落ちる月光を微かな金粉で表している。
六曲一隻の「大麦図屏風」71は、江戸時代の民間画家作でサインは
無い。三分の二を黒っぽい麦畑(昔は銀だったらしい)、上は金箔
の空。白い穂が無数にランダムに浮き上がっている、このモダンさ!
見終わって、彼女は可愛いくお茶目な一面を持つ方だろうと感じた。
2006.0518