地蔵盆の日、私はお供え物の買い物係だった。多聞寺へ向かう。
本堂の東側に並ぶ小さく仕切られた庫裡を見ていくと、見惚れるほ
どの木像があった。獅子を従えて立つ毘沙門天だ。平安時代中期か
後期。顔は大陸的で立ち姿が良い。獅子の顔も良く特に眼が印象的!
「なんだか好きだなぁ。」と漏らす。二つ年下のコウドウ住職は
「それはウチの由来となる多聞天で、作者が分かったら国宝になる
んやけど、分からないから準国宝なんだ」と向こうから返事をした。
いくら値打ちがある年代モノでも、ガラスケースの中の像なんぞ見
る価値は無いと言ったのは誰だったか。仏閣の中にあってこそと。
「元々ここは天台宗だったらしいわ」と言いながらこっちへ来た。
永年住んでいても初めて聞く。「けれど、国宝になるとナンヤカヤ
と規制があるしな・・・」そうそう、このままの方が絶対イイわ。
掃除係の方には失礼だが、塗りの台には灰がいっぱい落ちていた。
住職の奥さんは3年前に亡くなられている。ここまで手は回らなか
ったに違いない。何か拭くものない?住職の寄越したタオルを堅く
絞って拭きだすと、隣の阿弥陀さんらが次々呼ぶのできりが無い。
「ケイちゃんの気の済むように」とお声が掛かったので、この像の
庫裡だけピカピカにした。他の方はまだ3,400年お若いから、私み
たいな酔狂者が現れるのをお待ち下さいね。
嫁ぎ先の生駒から帰った住職の姉のみほちゃん相手におしゃべり。
獅子の眼は何で出来てるの?アンティークドールの茶色のガラスみ
たいって知ってた?後の時代で入れたのかな?「知らなかったなぁ。
あっ、たぶんHPに書いてるのと違う?」って、そういう時代か!?
2006.0828