きものに関して伝統を重んじるTさんと、アバンギャルドなOさん
と一緒に香道体験をする日。京都に着くと、本降りの雨だった。
今流行のキモノギャラリーをひやかしてから、イノダコーヒー本店
で休憩する。私は雨の降る日の喫茶店が好きだ。Oさんとケーキの
メニュを見ていたら、もう時間が無いよとTさんが言った。
タクシーで西本願寺向かいのお香やへ向かう。
線香や匂い袋となる材料を見たのち、教室で香道の講義を受ける。
驚いたのは、香木が採れる産地は東南アジアだけということだ。
特に私の好みの沈香・伽羅は、ベトナム(!)だった。
沈香木は、沈丁花科の植物の幹に貯まった樹脂が土中のバクテリア
により熟成されて出来る。だから一本一本微妙に香りが異なるのだ。
味覚と同じように、香りも甘・苦・辛(ピリ辛)・酸・カン(塩辛)
の五味に分かれる。そこから古典文学や四季にまつわるものを題材
に、香木の香りを聞き当てる組香という遊びが生まれたとのこと。
次に香室に移り三種香を体験する。最初のはスパイシーな辛、次は
塩辛いイメージと感じた。三つ目も辛と思うが、はて・・・などと
考えても無駄だ。伽羅の微かで儚い香りは、直感に頼るしかない。
記紙に名前と、五種類の香之図から”弧峯の雪”を選び、筆で書く。
正解は、後の二つが同じ香木の”琴の音”だった。3人ともハズレ。
経験豊富な人が当たるとは限らない。その日の体調にも因るらしい。
そんな不確かなコト!?「あくまでも、遊びですから」と講師の方。
日本三芸道の一つといわれるが、茶道・華道のように発達しなかっ
たのは、上達の度合いが分かりにくいからだろうと話し合って帰る。
2006.1213