花火は、やっぱり尺球が好きだ。視界いっぱいに拡がる豪快な大き
さと体に響く音。7月の花火は、開いたあとに金色の尾がしだれて、
ビーズのように細かく千切れ落ちてゆく先に、白く丸い月があった。
朝から暑いお盆の墓参り。神妙な顔付きで手を合わせる長男を見て、
感無量になる。大津市から引っ越して来た時、彼は4歳。ある日、
長男が墓のお供え物を食べていたと、姉は泣きながら帰ってきた。
当時と違って、お坊さんの念仏が済むと、各家が供えたものを持ち
帰る事になった。もう、猿みたいな子供も出ないだろう。
親戚の集まりで、毎回”おかず”にされた私の幼少期のエピソード。
「ラジオ体操の帰りにはぐれたので捜しに行くと、近所の家の朝食
卓に座っていた」「新調の赤い水着が嬉しかったのか、水着姿のま
ま祖母に見せる為、一人で2km近く町道を歩いていた」「飲み残し
の酒を飲んで踊っていた」など、3歳前後の眼を離した隙の数々。
今思うと、長男は私に似たのかもしれない。これらの話をして笑っ
ていた伯父伯母たちも、だんだんといなくなってゆく。
同じ頃か、お昼寝の時間になると遠雷が聞こえた。怖がる私に
「あれは蔵の戸を開け閉めしている音」と祖母は言った。
遠雷も夕立も望めない毎日。プチトマトのドライフルーツを作った
ら、3日目の日本最高気温更新の酷暑のせいだ、半分近く焦げた。
長じた分、増える思い出。今年も重ねた、幾つかの夏の断片。
今夜は納涼祭。昼間の気温とは裏腹な、冷たい夜風はどこから流れ
て来るのだろう。やぐらの向こうに上弦の月が見える。早、月は冴
えた金茶色を含み、次の季節の到来を知らせている。
2007.0818