それは突然、現れた。

雪から雨になった暗い夕暮れ、いつもの帰り道。療養所を過ぎてカ
ーヴを曲がると、視界の横一直線に緑色の光のラインが飛び込んで
きた。来月開通の新名神道路が試験的に点灯したのだ。

夜の空にとけ込む深い山々が、一変している。細かく刻んだ等間隔
の灯りは、信楽インターチェンジから緩やかなS字を描いて山腹を
横切る本線に続いている。道路脇に車を駐めて暫く眺めた。
  
初めて文明に触れた原住民の気持ちが分かる気がする。深沈とした
暗闇に、圧倒される巨大構築物と色が忽然と現れたのだから。

山の側面が大きく削られ、木々の伐採も進むうちは、山に住むけも
のたちの身を慮って暗澹たる気持ちになったのに、ゲンキンな私。


大気の澄んだ夜中にたまに聞こえる、遠く陸橋を渡る貨物車の音が
好きだ。トラックが深夜の雨に濡れた道路を走る音にも耳をそばだ
てる。『伊勢111km』の標識は、遠くの街を想像させて心惹かれる。

2月23日開通予定は、亀山JCT〜草津田上ICの約50km。去年の秋に
”新名神ハイウェイウォーク”の催しがあり、友だち数人が参加し
た。ポイントラリーで約10kmを歩いたらしい。

感動したのは、信楽と大津の中間にある”近江大鳥橋”だと言う。
翼を拡げたイメージの鳥が、上下線で2羽。かなり上空にそびえ立
つのを、建設中から幾度も見上げた。

ミホミュージアムのある田代方面から345号線に交わる、大鳥居の
信号から見える位置が一番美しいと思うけれど、実際に走ってみる
とまた違った魅力を発見するかもしれない。

2008.0128