『青竹祭』の前日は、『大原祇園』と呼ばれる宵宮だ。
宵宮の主役は、紙に細かな切り絵を施した燈籠である。蝋燭の灯り
でゆらめく紙の燈籠は遠い昔と何ら変わることのない情景だ。
燈籠を各字の当番役が頭上に掲げてぶつかり合う。年々、あてるだ
けの人が多くなった。昔を知る人には何とも歯がゆい神事になりつ
つあるから、たまに威勢のイイ処があるとヤンヤの喝采が起こる。
そんな中、数年前「男だろ!行けーっ!」と皆にハッパを掛ける女
がいた。声に押されるように傾れ込んでいく男もまた何人かいた。
花のヤマを竹で叩く神事の神花を奪うのはもちろん、楼門から蒔か
れる粽をつかむのも容易ではない。「近寄ってケガをしてはいけな
い」と言われ続けたものだから、今も遠巻きに見るだけの私だ。
が、それらをいつもしれっとした顔で取りに行くのが妹だった。注
意を聞いてないのか恐くないのか。行動力が羨ましかった。
長女は長じて、叔母の血を引いていることが分かった。今年もあっ
という間に神花を3本も取った。粽拾いも長男を誘って出掛けた。
運が良ければ粽に酒樽引換券が入っている。入ってなくても運良く
手中に収まった粽は、祖父の墓前に供えて帰って来たようだ。
翌日、電話で「カバンに入れて持ち帰った粽に、酒樽引換券が入っ
てたんだけど・・・」と長女は話すが、当日しか受け付けて貰えな
いのは常識だろう。こういう抜けたところは私似か。
時に、前出の掛け声の女は長女で、修理に3万8千円支払う壊し方を
したのはその父親である。ま、声に出さないだけで”あの祭に温和
しい男は面白くないだろ”と、実は私も思っている。たぶん妹も。
2008.0728