本を読む元気は無いが活字は恋しい。ある商業誌でたまたま目にし
た浅田次郎のインタビュー記事を読み、心の中で感嘆した。
『イタリアのトラステヴェレの地域では、室外機を置いて景観を壊
すぐらいなら暑い思いをしたほうがましという住民の意識があり、
それに共鳴する』とある。
一番印象に残ったのは『フローベルのことばの、一つの動きを表現
するには一つの動詞しかなく、一つのものを形容するためには一つ
の形容詞しかない、この言葉に祟られています』と書いてあった事。
そういう気持ちで書かなくてはと正座する思いになったのと、”祟
られる”の、この使い方を初めて読んで日本語は奥深いと思った。
『美しいものが最優先で、合理的なものは醜い』とあるのは語弊を
生ずると思うけれど、理解出来る。
浅田次郎の名前は知っていたが、未だ一冊も読んだことがない。こ
れだけ感心して話すものだから、当然次は本を読むだろうと家人は
思ったようだ。しかし、そう単純じゃないところが自分にはある。
彼が随一と賞賛する、司馬遷の”史記”か陶淵明を読みたいと図書
館へ出向いた。”史記”の本は見ただけで無理と判断したが、漢文
は好きだから陶淵明はナンとかいけると思う。
翌日は、東京に住む幼稚園入園前からの友だちと10年ぶりに会う。
姉妹のようにつきあえるこの気楽さ・・・。2時間半も話し込む。
映画”911”を見る。WTCを目印に、船着き場へ歩いた’00年の春を
思い出す。”グリーンマイル”は感動したけど、4時間は長すぎた。
夜更けにジャズバーへ行く。1杯のマティーニにようやく躰が回復
してきた感じがする。店の洋猫とミケの混血は端正な顔をしていた。
2008.0816