今年もお盆休みに、4歳からの幼なじみのミドリちゃんが東京から
帰ってきた。1年に1度の里帰りだ。二人で『TAKUMIYA』へ行く。
席に座ると「昔の自分の家みたい!」と彼女は驚いた。私は昔のミ
ドリちゃんちの押し入れを思い出した。2人でよく遊んだなぁ。
ミドリちゃんは『リボンの騎士』に憧れていたから、私はたいてい
お城に幽閉されたのち助けられるお姫様役だった。
助けに来るまで敵と戦うのだから、時間がかかる。城壁も登らなく
てはいけない。私は暗い押し入れの中で、その実況を聞きながらじ
っと待つのだ。時折、通りを走る車の音が聞こえたっけ。
役を交代する時は不満げだったことを、何十年かぶりに訴える。
秀才ミドリちゃんの仕事は、某大手通信教育会社の中一・中二数学
の問題作り。話が合うのかと心配するムキもあるが、それは無用だ。
偶然、お互い前夜に見たNHK”夏目漱石ひきこもりの謎〜100年前
のロンドン留学”で、一番心に残ったのが姜 尚中の(漱石は本を
積んでるだけじゃなく)「全部読んだのですよ」のフレーズだった。
読むに追い付かず買う本が溜まっていく様子をミドリちゃんは語る。
私は、初版で買った本が永年を経て賞を取っても、あるいは映画と
なりDVDになっても、まだ未読である本の数々を披露した。
「あ、それ読まなくていいよ」の間の手が入ると、重荷が減ったよ
うな気になった。
そうだ!ミドリちゃんのこの絶対的な物言いは変わってない。私の
素直な性格も、あの頃から何ら変わらないのだなと思った。
ということで終わっておくけれど、来年もまた帰ってきてね。
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