伊藤若冲は、面白い!楽しい!今見ても全然古くない。
メーン展示の『像と鯨図屏風』は、去年、北陸の旧家で発見された。
82歳の晩年の作は大らかな構図でユーモラスな絵だった。
”実際に象を見たのか”、当時の文献を集めていたのが興味深い。
1728年に、広南(ベトナム)から長崎に象はやって来た。牝はそこ
で死に、牡は江戸まで連れて行かれた。道中、京都で天皇に謁見し
た時に若冲も見たであろう。なのに漫画のような象を描いたのは何
故?という展示の運びが関心を持たせる。
『芭蕉に鳥図』は、たくさんの虫食いや枯れた部分のある葉から、
瑞々しく新しい葉が出ている処。鮮やかな鳥のキリリとした佇まい。
加えて赤色の使い方のバランスが、呆気にとられるほど巧みだ。
掛け軸の『梅図』や『雨龍図』の構図は大胆でかっこいい。明るい
感じの『寒山拾得図』なんて他で見たことが無い。伏見人形の布袋
さんはほのぼのとして温かい。この画風のバリエーションの多さ!
有名な『鳥獣花木図屏風』は、タイルに描いているのかと見まがう。
一辺が1.2cmの枡目が86,000個余。その一つ一つに2色以上の色を重
ねているという。空と思っていたバックの青は、海との解説だった。
実際と空想上の動物、珍しい果物、更紗文様の縁どりなど、日本の
江戸時代の画家とは思えない異国情緒と色彩に目を瞠るばかりだ。
若冲の名は「大盈は冲(むな)しきが若し」=満ち足りたものは空
っぽのようにみえるが、その才能は尽きることがない=という老子
の言葉を、相国寺の大典禅師が贈ったことに起因するという。
亡くなる直前まで新しいものに挑戦し続けた彼にピッタリの名前だ。
MIHO MUSEUM 2009年秋季特別展「若冲ワンダーランド」
2009.1101