仕事初めの翌日、出張から戻った二村さんは、深く息を吸ったり吐
いたりしている。遂に「かがめません・・・」と苦しそうに言った。
聞けば、新商品の部材を依頼した会社で、社長ご夫妻に”食べ放題
のしゃぶしゃぶ”をご馳走になったらしい。学生なら可愛いけれど。
高速道路が安くなったせいで、阪急フェリーの運航本数は激減した。
九州方面へ年始の挨拶に行った社長は、往年の阪急フェリーの賑や
かだった食堂を懐かしむ。
遠距離トラックのドライバーが、ゆっくり休めることの出来た時間
まで消えてしまったのだなと思う。
一年間お茶の稽古を休んでいた。今年は復活しようと思っていた矢
先、先生がご自宅の初釜に呼んでくださった。
濃茶が美味しい。去年、私のたてたのとは大違いだ。舌の両端で味
わう。炭の間から立ち上がる”松重ね”の香は渋くて清々しい香り。
やはり、このような五感に訴える静かな時間が私には必要だ。
福籤のようにして、皆にそれぞれプレゼントがあった。私は林の中
の虎の絵の扇子だった。五黄の寅が長男の干支なので記念になる。
生まれ育ちが大阪でも、滋賀に移り住んで同じ年月を重ねた友だち
は、「人が多くて酔いそうになる」と梅田の阪急前で言った。もう、
体が滋賀県対応になっているのだ。
私は、台湾や上海の市場を思い出して旅行気分である。
デパートの財布売り場に群がる人の多さに驚くと、「年始めに買い
換えるものだから」と友だちは言う。その風習が残っていると目に
見える、活気あふれる大阪だった。
2010.0112