終業後、社員研修会を土山町の温泉で行った。と言っても、食後は
カラオケ室に集まって和気藹々と過ごす気楽な一泊旅行だ。

心ばかりの景品をビンゴゲームで渡すことにした。

工場長が早く上がり、人気のあったTVチューナーを自分のものにし
た事、それからは気の抜けた司会進行になった事で、心の底からリ
ラックスしているんだなと思った。いきなり幹事役放棄だった。


翌朝、バイキングの朝食で知的障害者のSさんと社長と私が同席した。

彼の仕事は、ベルトコンベアーで流れてくる型抜きされた鉢の仕上
げだ。粘土が乾く前に縁をなめらかにしたり、不具合を直すことだ。

”55個作るところを、型抜きするOさんが余計に作りすぎること”が
問題だと言う。「俺はさぁ、無駄だと思うんだよねー。」

そこへトレーを持ったOさんがやって来た。Oさんは弊社に永く勤め
る70才すぎの職人気質の人だ。

早速、Oさんに注文の数しか作ってはいけないと説明する。TOCを充
分勉強していない私でも、これは基本中の基本だとは知っている。

「毎日工場長に言われるから、わかってるんだ。でもキリのいい数
まで作りたいんだわ。癖なんだわ。」と言うではないか。

命令だけでは伝わらない人もいる。”Oさんには作る分の粘土しか
渡さない”など、具体的に示すことが解決策だと思った。

うち解けたSさんは、東京の実家の事情を少し話したあと「身内の
コトを愚痴ったりするのは恥だけどさぁ。」と照れた。

食堂を出ると、社長が「Sのどこが知的障害なんだ?」と聞いた。


皆とゆっくり話せるこのような機会を、度々設けるべきだと思う。

2010.0216