西日が、障子に葉のゆらぎを映している。ぼんやりと眺めているう
ちに、昼寝から目覚めたことがわかる。

巻紙に筆で何やら書いていた祖祖母の独り言は、何を言ってるのか
分からない。後年、短歌が趣味と知ったけど。

祖母は、おくどさんのある暗い台所でクレープを焼いてくれた。洋
裁と和裁で出来た色とりどりの端布で、お手玉を作ってもくれた。

蓄音機で聞いた曲は何だったろう。聴けば踊りだした。蔵の探検も
好きだった。祖父の遺品は物珍しい。蛇腹のカメラは重かった。

ほとんどの日中を物静かな2人のおばあちゃんと過ごした、4歳の私。


リゾート地で自己啓発セミナーを受けることの出来る『ゴールデン
・ドア』
は、アンハリエットの講義を目的にやってくるゲストがほ
とんどだ、という記事を読んだ。

ここへ行く時間も余裕もない人たちへの彼女のメッセージがこうだ。

「楽しい時間を追い求め、堪能する。どんなに過去が最悪だとして
も、いつかは乗り切る方法を学ぶことが出来るのです。幼い頃、自
転車に乗れるようになったの同じです。」

「自分の可愛らしい4歳の子供だと思いなさい。そして、その時受
けた優しい扱いで自分をいたわりなさい。4歳であることを誇りに
思いなさい。」

いつも誰かに見守られていた思い出は、幸せな気持ちを醸し出す。

”4歳を誇りに思う”とはどのようなことだろう。興味津々でいる
こと?自分のしたいことだけに熱中すること?毎日、勢いを待って
いることだろうか。

2010.0418