子供たち3人の高校時代、毎日お弁当を作った。重なる年がなかった
ので合計9年間になるが、今となってはあっという間の出来事だ。
長女の幼稚園で”週2回のお弁当持参”が始まった時は、長男が1歳
になったばかりで育児と家事に追われ、お弁当作りが苦痛だった。
なのに、赤(肉)黄(卵)緑(野菜)白(ご飯)黒(海苔)など色
を豊富に入れる事にこだわった。ある日、どうしても緑を入れる時
間がなくて、昨夜の残り物のホウレン草のおひたしを入れた。
このことを、長女は20年以上経った今も「腐ったホウレン草が入っ
ていた」と昨日のごとく話す。たった1日の、たった一つのおかず
の気を抜いただけなのに。そこで私は”伝説の弁当”で切り返す。
次男の通った高校には、”伝説の弁当”が語り継がれている。
それは、『白ご飯にみかん1個だけ』や『白ご飯に枝豆だけ』の弁当
を作ったお母さんがいたという伝説だ。先日次男と話していて訂正
を強いられたのは、枝豆じゃなく『枝豆の殻だけ』という点だった。
私はこのお母さんを知っている。ちょっと料理が苦手なだけだ。
枝豆は、寝ぼけて入れ間違えたのだろう。鍋料理と鉄板料理が一週
間おきの夕食だとか、給食はご馳走だとか話題に事欠かなかった。
最近は”キャラ弁”が流行っているらしい。キャラクターをかたど
ったお弁当を作ってやれないと子供が幼稚園で惨めな思いをすると、
自己嫌悪に陥ったお母さんがいるという。
”伝説の弁当”を作ったお母さんを紹介してあげたいものだ。その
息子は大学卒業後、東京で証券マンとして働く立派な青年になった。
そして、この伝説をさらに詳しく話して笑い飛ばす。
2010.0428