伊勢神宮の内宮の参道を歩くと、地面から宇宙まで真っ直ぐ繋がっ
ているような、力強い”気”みたいなものを感じた。
随分と雨を吸い込んだ森は、すがすがしい香りを発している。
このような木々の中を歩くのは久しくなかった。田舎に住む私でさ
えそうなのだから、街の人なら尚更、深く呼吸したくなるはずだ。
樹齢何千年になるのだろう。太い樹木に耳を当てる人が幾人もいる。
私も濡れた木肌に耳をつけて目を閉じた。心を澄ます処がここにも
あった。
前泊は榊原温泉。友だちのYさんの家があるのだ。関東に住むKさん
と久しぶりの三人会。
Yさんの家のお風呂は、蛇口をひねると温泉が出る。これを沸かせ
ば、他所へ行かずともとろりとした良質の温泉に浸かれる。それを
知ったのは夕食を終えた頃だ。
何日か前「どこか行きたいとこある?」と聞かれ、「伊勢神宮と温
泉街!」と威勢良く答えた私の希望に沿って組まれたスケジュール。
着くとすぐに大きな旅館のお風呂に連れて行ってくれたのだ。
伊勢参りの前に身を清めることを「湯ごり」と言い、この地は平安
時代から賑ったそうだ。「七栗の湯、有馬の湯、玉造の湯」と枕草
子が褒めた七栗は、榊原温泉のことだった。
『美人湯』の活字の威力は偉大で、何度も顔を洗う婦人が多かった。
私たちも、夜・翌朝と合計3度も湯に入った。
女だけの旅行は太るなぁと思いつつ、名物の”てこね寿司”(カツオ)
と、”伊勢うどん”(甘醤油のかけ)を食べて締めくくりとした。
2010.0627