信楽で『陶芸の魅力×アートのドキドキ』が開催されている。

「その行事の一環で、”きむらとしろうじんじん”が野点をする。
各自が彩色した楽茶碗でお茶を点ててくれるから、行ってみてはど
うか」と、先週、高山さんが勧めてくれた。

けれど、身長が2mくらいで、ピエロのような化粧をして坊主頭の上
に茶筅をつけていると聞けば、近寄ってはいけない防衛反応が働く。

そこを推して、信楽川と大戸川の中州にあるテントに向かった。

すでに20名ほどの人が集まっていた。じんじんさんは、関西弁を話
す気さくな方だった。背も高いが、ブーツの内底ヒールも高かった。

暢気なムードの中で、私ひとり紺色のブレザーは異色だったからか、
「仕事の途中に抜けて来たんですか?」と、じんじんさんは聞いた。


10種類ほどの器から好きな形を選び、泥状の釉薬で絵を描く。
すぐに乾くし、筆にたくさん含ませるとぶ厚くなるので難しい。

薄曇りの空に桜吹雪が舞っていたので、茶碗の外側に新緑の葉と桜
を描いた。内側に小さく花びらを幾枚か。縁を滑らかに整えるが、
わざと一,二枚を縁に引っ掛けて描いたのは興というものだ。

焼き上がりが愉しみだったのに、午後から甲賀市全域に強風注意報
が発令されて、焼成は翌週”陶芸の森”でしてくれることになった。

じんじんさんの野点で、お茶をいただきたかった。じんじんさんは、
信楽のあとは東北地方を廻る予定とのことだ。


そして今日、連絡が入ったので取りに行った。花びらは地味な色に
なり、貫入が枝に見える渋い仕上がりになっていた。

添えられたじんじんさんの手紙に、温かい人間味を感じた。

2012.0427