稽古前の腹ごしらえ。ランチの前菜がくるまで、予習復習をする。
茶道の『四ケ伝』は本にされない。伝なので覚えるより他はない。

高槻の教室は、4人中3人が「宗」の字を含む名前をお持ちである。
つまり講師級の方に混じって、中〜上級クラスの私が習っているわ
けだ。さらに皆さんは月に数回、私は2回の稽古という次第。


日曜日の午後から気温が上がり、単衣の紬では蒸し暑く感じる。

記憶を総動員し先生の指導に従い、一心にお点前するも、巧くいか
ないもどかしさと風炉釜の熱さが伝わって、胸に汗が流れた。


背を屈め、田植えをする早乙女の掛軸が掛かっている。その二人が、
ぽつぽつと離れて描かれているのが面白い。二人の間に爽やかな風
が吹いているようだ。淡い墨色も、涼感の功を奏している。

小さく細かな白い花の珍至梅。半夏生の白い葉。紫陽花の薄いピン
ク色。それらが濃い飴色の籠に入っている。白色が、清清しく映る。

緑地に、幾艘かの白い帆舟が浮かぶ紙釜敷。その上に白木の香合。
香合は、水紋に見える年輪が正面だ。蓋を開けると、蓋裏の左半分
に焦げ茶色で葦が描かれていた。銘は”澪つくし”とのこと。

これらのお床を拝見しているうちに、すっかり汗が引いた。


正客に座って、主菓子の”水無月”をいただく。大きな三角だなと
思ったけれど、安堵感からかするりと食べてしまう。

年配の方が習っていた昔は、点前の練習中、先生が団扇で扇いでく
ださって、その風がなんとも涼しく気持ち良かったとおっしゃる。

どの方のお点前も美しく流れるような所作だ。同じ空間にいるだけ
で自然に身に付くのではないかと、至極楽観的な気持ちで見つめる。

2012.0628