日月潭に向かう道路沿いに生い茂る木は椰子に似ていたが、「椰
子じゃない、檳榔(ビンロウ)だ」とガイドさんは言う。
檳榔の実を噛むと口の中が赤くなり、歯にも胃にも良くないのに
食べるのは、依存性を持つからとのこと。町中でも『檳榔』の看
板が多い。“健康”なんて端から気にしないのかなと思う。
台湾にも先住民族はいた。今も14の民族が住んでいるらしい。
花蓮に向かう急行電車で、近くに乗り合わせた家族は、顔付きも
服装も、明らかに町中の台湾人と違っていた。
転院だろうか。鼻からチューブを付けている小さな身体のおばあ
さんを囲むように、息子と思われる肩までの黒い髪・褐色の肌で
眼光鋭い男性と、孫とみられる少女と少年が座っている。
皆の気遣いが、一時も外れないほど注がれている情景を、公共の
場で見ることがあったろうか。映画の一場面のような気がした。
高雄で一軒のBARに入る。店は白人の溜まり場だった。台湾人の
若い女性ボーカルは、少し掠れて甘く伸びる声で、27歳で死んだ
エイミー・ワインハウスの歌を歌っていた。
頼んだマルガリータとマティーニは、日本の3倍はあると思われ
るグラスになみなみと入っていたので、思わず笑ってしまう。
ラジウムを含む北投石、金、珊瑚、猫目石、翡翠、大理石などが
とれる台湾は、別名『宝島』と譬えられるそうだ。それらの加工
場が高雄に集中しているので宝石店が多い。記念に買おうと2,3軒
の店に入ってみたが、デザインが旧くて懐かしさが先にたった。
台湾は夜市だけでなく、どの街にもノスタルジーが溢れている。
2012.0908