蹴上の信号付近に、赤と白の彼岸花が数メートルごとに咲いていた。
白い彼岸花は、居残った夏の暑さに、爽やかにそして気高く見える。

径を抜い、高瀬川にかかる小さな石橋を渡り、N眼科に辿り着く。

診断の結果、左眼は遠近両用の、右眼は乱視と近視のコンタクトレ
ンズを入れることになった。今までと違うので、不安定な感じだ。


平安神宮前で昼食をとる。偶然、店内に志村ふくみさんがいらした。
格子柄のきものをすっきりとこなしてらしたのはさすがだなと思う。

それから、高橋由一の『鮭』を見るため近代美術館に行く。

留学した由一が、コンテや木炭じゃなく、墨で描いてる処が面白い。
また、葉書サイズに緻密に描かれた上海の街中のスケッチに驚く。

描き上がった絵に憤慨して泣いた、23歳の『花魁』の気持ちが分か
らぬでは無い。しかも、後世に残るほど有名になるなんてね。

4階のコレクション・ギャラリーでは、片岡球子の巨大な屏風が圧
巻だった。灰色の顔のお坊さんの、何でこの色?というインパクト。
長女は百歳を越えた画家が存在したことに驚いていた。

近くに、先ほどお見かけした志村ふくみさんの作品が展示してあっ
た。たぶん、着ると軽くて暖かいという気がする。


次に、長女の習う華道展が催されている大覚寺に連れて行かれる。

広沢池はこんなに小さかったのかと、曇り空が映った水面を眺める。
三歳の私が仏頂面で、この池の舟に乗っている写真がある。その頃
から周りの風景にあまり変化を感じない、都外れの夕暮れだ。

赤い彼岸花は沈んだ色になった。晴曇雨と目まぐるしい天気のため
か、コンタクトレンズのせいか、夢を見るような情景の一日だった。

2012.1008