ミホ・ミュージアムの「古代ガラス展」を見に行った人たちの、こ
の展覧会に対する評判が良く、私は出掛ける隙間を探していた。

休みの取れた日は真夏日になった。真っ赤なツツジが満開の庭園を、
タンクトップ姿の白人グループや、ジャンバー姿の中国人グループ
が大挙して歩いていたので、海外にいるような錯覚に陥る。


4500年前、北メソポタミヤで生みだされたガラス。ガラス容器の作
られ始めた3500年前からの、様々な色ガラスの展示は圧巻だった。


大英博物館蔵の『ゴールドアカンサス文碗(前250年頃)』は、金の
蒔絵がガラスでサンドイッチ状になっている、技術の高さに驚いた。

この碗を復元するため、日本人のエキスパートたちが、数ヶ月かか
って取り組んだ過程をビデオで放映していた。

昔の日本の城や塔を建てた大工は、信じられないような短い日数で
仕上げたと本で読んだことがある。便利な機械が出来た分、人間の
能力は劣ったのではないかと、有名な宮大工は語っていた。

ガラスの製造も同じことが言えるのではないか。極最小のビーズ。
細かな文様、宝石以上の透明感を目指して、それらは完成している。
何千年も昔で、人の技術は最高に達していたのではないだろうか。


売店で4000年前のビーズが一個(φ1cm)、堅牢な細い紐を通しペン
ダントとして販売していた。価格は1本2万円〜5万円弱で、3本きり。

美術館に陳列するようなものが、売られていることに驚く。神秘的
で、魅入ってしまう。想像のつかない永い歳月を潜ったのだから、
強力な御守りになるんじゃないかしら。あぁ、買うか買うまいか。

当日、超現実派の母が一緒だった。顔を見た瞬間、売店を後にする。

2013.0520