何週間か前の私の不在中に「作品を見て欲しい」と言う女性が来た
のが、ずっと気になっていた。連絡をして、やっと今日会うことに。


彼女のパソコンに映し出された、最初の作品から惹き込まれた。鱗
状の羽根を持つ淡い青色の鳥、鳥か花か分からない淡いオレンジ色
のオブジェも面白い。それらは陶器で作られていた。

細い針状の羽根が、いっぱい付いたゴージャスな鳥たち。たくさん
の細い紐で作られた繊細な花、しかもその花を、球体になるほど集
めたランプシェード。作品の数々に圧倒される。問題は移動手段だ。

欠けたら終わりだが、そういう事は考えずに作ってしまったらしい。


蛸の絵の大皿は、表より裏側にびっしりと足と吸盤が描かれていた。
爬虫類の装飾品は、好き嫌いがハッキリ分かれるが、蛸もこの部類
に入るのではないか。

手描きの幾何学模様の白地の壷もあった。細い線が何本も描かれて
複雑な模様が美しい。ピンクの芍薬を活けたら似合うだろう。


「つまり貴女は、花びらや鳥の羽、蛸の足の吸盤など、描こうと思
えば再現なく描き込める対象が好きなのですね」

彼女は、この春大学を卒業して、九月に信楽に引っ越して来たそう
だ。アルバイトをしながら作陶していると言う。今までに受けたア
ドバイスはすべて、「描き込みすぎると売れない」だったそうだ。


展示会は、売れる売れないより、好きなモノを作ってこそと思う。
「貴女の作りたいモノで、個展をしましょう」と言うと、眼をキラ
キラさせて頷いた。これから半年は時間が欲しいとのこと…。

彼女の作品を見たら、誰もが驚くに違いない。来春が楽しみだ。

2013.1109