今年の大原祇園は、春に長男が実家に帰ってきたこともあり、次男
を除く家族みんなでお詣りに行くことにした。こんな年は珍しい。
夜祭りには団扇が必需品だと、家に取りに帰った主人が、押し入れ
から出して来たのは、私と長女の幼稚園の時の手作り団扇だった。
母が残していたのだ。長女で四半世紀、私のは半世紀ぶりに手にす
るが、年月が経ち過ぎて何の感想も湧かず、パタパタと扇ぐ。
扇ぐうち、赤い金魚のシールが大好きだったことを思い出した。
子供の数が減って、踊り子が揃わないらしい。昔から役は男児と決
まっていたけれど、近年は女児も出ていると聞いていた。
今年はそれでも足りないから、中学生から赤ちゃんまで借り出され
て大変だと幼馴染が言う。満更でもなさそうなのは、その一歳の子
が自分の孫だからだと思う。今後は毎年、彼の成長ぶりを見られる。
途中で皆がバラバラになったのを機に境内で涼んでいたら、見覚え
のある二人の男性が、一眼レフのカメラを肩に掛けて歩いていく。
中学の同級生だ。ギンガムチェックシャツに、くるぶしまでのコッ
トンパンツ。見かけはちっとも変わっていない。思わず呼び止める。
確かふたりとも中3の時、SLの写真を撮りに行ってたよね。あれか
らいろいろと人生を歩んできただろうに、その頃と同じような顔を
して、桜並木の大井川鉄道のSLをデジタル画像で見せてくれた。
「定年まで数年あるけど、もう辞めたいよ」「僕ら、これからした
いことがいっぱいあるんだ」って、セリフまでなんだか懐かしい。
お祭りの夜は、深い鎮守の杜の奥まで辿れば、どの時代にも行き来
できる扉がありそうな気がする。
2014.0723