『大きな山は小さく崩す』のTOCの例があるように、今年は身の周
りの断捨離を細かくやっていこうと思っている。
時間の使い方も、能率に重きをおいてきたけれど、今後はその上に
上質な時間を多く持つようにしたい。
例えば、就寝前にiPhoneでFacebookなどをチェックするのはやめ
て、とりあえずは去年秋から枕元に積んでいる文庫本を読む。
本とは巡り会いと思っていたが、そんな悠長なことを言ってたら優
れた名作と会わずに終わってしまうのではないか。そう感じて購入
した『日本文学100年の名作』は、1914年から10年ごとに中短編
を収めている文庫本だ。1944年までの第1〜3集を拾い読みする。
今のところとりわけ素晴らしいのは、中勘助の「島守」だ。こんな
美しい日本語があったのだと、何度か眼でなぞってため息をつく。
目の前に、湖面や雪を抱いた山々と枯野が広がる。数日経っても実
際に見てきたように心に残っている。
加能作次郎の「幸福の持参者」は、なんという簡素な暮らし振りだ
ろう。その清々しさだから、小さなモノひとつ増えただけで、幸福
に感じたりあるいは余計な侵入者だと感じるのではないか。
増えたモノに対して敏感に“余計な侵入者„と感じられない自分に
舌打ちをしたいほどだ。
龍胆寺雄の「機関車に巣喰う」、林芙美子の「風琴と魚の町」も、
生きていく最小限のモノだけが浮かび上がる。情報も多いと、かえ
って生きる本質を見失いがちになるのではないかと思う。
はからずも、今年の指針となった全集の起首3冊である。
2015.0111