片岡球子展は面白かった。

常々、迫力ある絵ばかりだとは思っていたけれど、25才から晩年
までの作品を見通せたのは素晴らしかった。

小林古径は「あなたの絵はゲテモノと言われているが、ゲテモノと
本物は紙一重だ。描き続ければきっと本物になる」と励ました。

50代から60代の絵に、構図があるのかわからないほど画面いっぱ
いに濃い色を塗り重ねた上に、更に“これでもか„とボンドや紙を
付けている絵があり、ゲテモノここに極まれりと思った。

70才から80才代の絵は、毒々しさが昇華した感じがする。特に富
士山と花がモチーフの、紅い富士も蒼い富士もとても好感を持った。


若くは"炬燵布団"から、熟年期の"歌舞伎役者の衣裳"まで布の肌触
りが分かるような質感の表現が素晴らしい。その箇所を眼で触る。

空中に投げだしたような裸体の描き方も、面白い試みだった。

とにかく全篇、圧倒される力強い絵だ。エネルギーが噴出して止む
ことがなかったんだろうなと、晩年の"顔だけはっきりした雪舟と、
輪郭のぼやけたベージュの海老"の絵を見て思う。

そして何故だか、この絵が一番印象に残っている。


帰って社員の二村さんにこれらの感想を述べたところ、二村さんの
大学時代、球子は客員教授で、年に一度大学で絵を描いたと言う。
お付きの男性が4人いて、球子が掌を上にして右手を差し出すと、
絵具を付けた筆をその上に乗せたそうだ。

作家でも職人でも生涯情熱を持ち続けるのは難しい。その点、最後
まで情熱を持ち挑戦し続けた球子は幸せな人だと思った。

2015.0518