「○○さんは足の爪10本とも真っ赤に塗っていた!でも手は、爪の
先とか半分とか色々に塗り分けられていたの!」これが高校の同級
生と一泊旅行をして帰ってきた母・齢80歳の第一声だ。
○○さんは画廊経営していて独りでロンドンやN.Yに行くような人
だ。昔、家に遊びに来られた時は女優かと思った。毎回、誘ってく
れているのに遠いからと母は億劫がる。
私ならその歳まで生きていれば、ペディキュアはピンク色にしても
海外に気軽に行ける英会話力はつけていたい。
「驚くことに、習いに来て一年以上経ちました」と英会話のG先生
に言う。それは私の頭の程度を言ってるのか、G先生の教え方を指
摘してるのか分からないけれど、私は”トホホ”の顔になる。
G先生とは、たまに政治から世界の動向まで話が及ぶことがある。
英語で話せればいくら脱線しても良いだろうけど、テキストは遅々
として進まないから困ったものだ。
そしてまた驚くことに、先生の家でこそ旧き良き時代に触れている。
たとえば”つるし柿”。一瞬にして祖母の家で過ごしたあれこれを思
い出す。G先生はおっしゃる。庭にあるからもったいないでしょと。
それでいて、渋柿の美味しい食べ方と保存の方法までよくご存じだ。
馬を25年飼っていたが馬の調教は奥深いものがあるとか。今、ご自
分で塗り替えられている土壁の話。畑で採れる野菜のこと。手作り
の味噌や梅干しの話。手間暇かけた生活ぶりに幼い頃に過ごした祖
母の家と同じぬくもりを感じている。
そして、馬の調教にみるG先生の根気よさを私にも期待している。
2015.1108