夕食に『フキ味噌』が食卓に上がった。庭の隅にフキノトウが一つ
出ていたからと母が云う。そうか、春は来ていたのだ。
一昨日の還暦を記念した三社詣りは、義父の四十九日と重なったの
で諦めたが、夕刻の会食から参加する数人と甲賀駅から忍者の絵が
描かれた電車で会場に向った。
宴会は小学校の同級生とこの地区に嫁いできた人の四十数名で始ま
った。馴染の顔にくつろいで、これといった話はしないまま、ほと
んどの人と二次会に流れる。
そこは"薄い薄い焼酎とウイスキーの水割り"が有名で、あとはウー
ロン茶の3種類しかないという。でも店名は『北新地』だった。
隣に座ったミドリちゃんと、三日違いで産まれた初孫の写真を見せ
合う。薄い薄い熱つ熱つの焼酎のお湯割りを啜りながら。
ミドリちゃんは、去年暮れの紅白歌合戦で某歌手の着ていたコート
は長男がデザインしたものだと自慢した。長男の関連会社の洋服を
着ているミドリちゃんは垢ぬけた感じだ。
あの人誰?と白髪・長身の男性を指すと、「ほら、山へ水晶を採り
に行って一晩帰ってこなかった・・・」と言うので思い出した。
あぁ、私が男に生まれていたなら、きっとアツシ君と一緒に山へ行
っていたに違いない。実は、数年前から密かに地学野外講座(つま
り山や川に出掛けて石探し)に参加したいと思っているのだ。
しかし、アツシ君とは鉱物の話をすることもなくお開きになった。
数十年ぶりの人もいたのに時間が足りない。それでも、皆の顔を見
ただけでエネルギーを注いでもらった気がしている。
2017.0228