「今夜は火星が大接近するから、大下さんちで一緒に見よう!」と
電話がかかってきた。声を弾ませているのは陶芸家のYさんだ。
大下さんは民間人では珍しい天体望遠鏡をお持ちだ。レンズの直径
が15cmあるそうだ。追ってYさんから「巻き寿司を作って持ってい
く。宇宙巻き!」とLINEに入る。約束の待ち合わせは午後7時半。
大下家は小高い山の頂にあり、広い庭の片隅に天体望遠鏡が設置し
てあった。到着すると、Yさん夫妻はすでに望遠鏡を覗いていた。
火星が昇ってくるまでのあいだ、木星と土星を観る。私はこんなに
くっきりとまるで図鑑そのままに、木星は薄紫色の縞模様が、土星
は輪っかが鮮明に見えることにとても驚いた。大下さんは「土星は
地球の約9倍の大きさ」など随所に解説してくださる。
Yさんが「火星に行きたい。火星行きの第一弾は2026年と募ってい
た」と言う。するとYさんの奥さんが「行くのに6ケ月、帰って来る
のに2年半かかるけどいいのか?」と念を押した。
私は「まず強靭な精神力があるか、閉所恐怖症や地球への帰還願望
も打ち消すメンタリティを持続させる事が可能か」と自説を述べた。
奥さんは筋肉の衰えを防ぐ筋トレは持続出来るのかと問う。次第に
Yさんは「第二弾にする」と言いだして、火星行きの話は終了した。
見飽きない。果てしなくちりばめられた星の数々!そして、『星の
一つ一つの色と形がこんなにも違うものだったのか』を体感した。
望遠鏡に関しては質問し出せばきりがなく、大下さんの返答も夜中
でも終わらない気配がしたので、あとでネットで調べようと思った。
最後に、Yさんの宇宙巻きがずば抜けて美味しかった事を書きおく。
2018.0808