昨年茶道の免状をいただいたので亭主役をする課題があり、気に重
くのしかかっていた。遂にその日を迎える。前日から庭の掃除と料
理の下拵えに出向いてくれた稽古仲間がいて、一層気を引き締めた。

高齢のため出席できない櫻井さんから貰い受けた椿が、折よく蕾を
つけたのは、偶然とはいえ今日の日に相応しい気がした。

三人は水屋仕事、先生含め五人が路地を通って茶室に入る。まず初
炭手前。炭を的確に次いでいくのをお客が近寄ってご覧になる。

釜の湯が湧くまでの間に懐石料理を召し上がっていただくのだが、
熱いものは順よく出さなければいけない。飯碗・汁碗・向う付。燗
鍋(酒)。飯と汁のお代り、碗盛、酒、焼き物、箸洗いと続く。

そして、山の物(銀杏)・海の物(牡蠣)を盛った八寸と燗鍋を持
って入り、次客から順に「お流れを」と言って盃を手に酒を酌み交
わす。ヤマダさんが驚いて「今までの態度と打って変わって、急に
厚かましく酒を要求するのは何故でしょう」と先生に問うている。

私は教科書通りに、正客が懐紙に分けて下さった銀杏を頬張り、順
次返杯を飲み干し末席まで進めた。末席で2度杯を受け正客に戻る。
料理は湯桶と香の物で終了し、柿の和菓子を出して襖を閉める。

ここまでのすべては、次の濃茶を味わうための前提にすぎない。

席の模様替えをしたのち、銅鑼を鳴らして合図をする。濃茶は五人
分美味しく練ることができ、肩の荷を半分下ろした。後炭点前の後、
和やかに薄茶点前で歓談、お見送り。皆の協力で何とかやり通せた。

反省会、「本にあろうと先生が好しと言えど、通常亭主は八寸の物
は食べない」と水屋からのご指摘。そうかなぁと未だ懐疑的である。

2018.1128