和歌山県のNさんは、社長の古くからの知り合いだ。先日、来社さ
れた時に、熊野古道と紀伊半島の魅力を語ってくださった。

会社経営の傍ら、ラジオのパーソナリティを9年も続けていらっし
ゃるだけあって知識豊富・話題満載だった。紀伊半島はカルデラで、
温泉はプレートの摩擦熱で熱いという。知らない事ばかりで驚く。

亜熱帯で育つリュウビンタイが紀伊半島で群生している、沖縄にし
か生息しないとされた猛毒の蛸が、近年、網に入っているそうだ。
今や信楽の松茸は不作で、去年は長野県が豊作と聞いた。身近な話
題で温暖化が進んでいるのを確認することができる。

「昭和の住居が過疎化で誰も居なくなり、急速に森に戻っているが、
平家の落ち武者が拓いた集落もそうであったように、紀伊半島の深
い森は元来そのような場所ではないか」とおっしゃったことが、と
りわけ心に残った。


84歳の母の秋の生きがいは、日野菜漬を漬けることだと思う。家族
だけでなく親戚まで待ち望むから。しかし今年は不作だった。最初
は大きくならず、二度目に水と肥料を与え、やっと少し収穫出来た。

家族のみで消費するくらいの量だが、母の体力とちょうど見合って
いるのではないか。去年まで、私が後を引き継ごうと思っていたけ
れど、洗う手伝いだけでもけっこうな労働だった。今後継承するな
らば、このくらいの控えめな量にしようと思う。

ほんの数時間、風にあてるため竿に干すのは風物詩で、あぁ秋も深
まったなと少しの寂しさを感じる。紀伊半島の消滅した昭和の集落
には、どのような秋の風情があったのだろう。

2019.1128