信楽焼に関わる仕事に従事する人にとっては、何の疑問もなく「懸
崖鉢」と「輪型鉢」の形状は頭に浮かぶだろう。

しかし私は、入社の頃も今もピンとこない。特にケンガイとは何ぞ
や。ケンガイは菊栽培の"懸崖作り"からきていた。信楽焼では火鉢
の低迷後、植木鉢に着目して昭和30年代に誕生したようだ。

当社は、焦げ茶色・白色・深い青色の『なまこ釉』などで、これら
を大量生産してきた歴史を持つ。今も製造している商品群だ。

今月、形はこのままで、現代に活きる「懸崖」「輪型」を開発した。

カタログを印刷する時に、予てからの意見「ケンガイは読めるのか。
商品名があれば懸崖・輪型の文字は不要ではないか」と述べる。

二村さんは、今流行っている"重要記録を保存・活用し、未来に伝
達すること"の『アーカイブ』に乗じているので、あえて載せまし
ょうと言う。半世紀以上の定番が新しい感覚で受け入れられるのか。

今年初めの展示会に出してみた。反響はまぁまぁだった。

異業種の社長が「新しいコトは売れるまで三年かかる。その間、持
ちこたえられるかどうか」とおっしゃった。だが、広まるのはもっ
と早く、また、そんなに待てないご時世になっているのではないか。


ところで、工場長、リンガタは何処からきてるの?と聞くと「知ら
ないなぁ」と答えた。40年以上この仕事に携わっているのに!?

しかし工場長には人脈がある。皆に「今まで考えた事もなかったの
か?」と言われても、全く動じない泰然さも持ち合わせていた。

信楽焼の監修をする人などに問い合わせてもらった結果、輪型は
「仏壇のリンの形からきている」というのが有力な説だった。

2020.0128