大阪の最高気温は22℃。炉開きには暑い日となった。

それでもお祝いに相応しく、一つ紋入りの柿茶の色無地に金色の袋
帯を締めた。迎えに来てくれたTさんも木賊色の色無地をお召しだ。

私たちの若い頃に、きものと草履をお揃いに仕立てるのが流行った。
きもの生地は1反。Tさんはピンク色の色無地を作るとき、身長が
170cm以上あるにもかかわらず、草履分の生地を捻出したから
「このきものは、おはしょりが短いのよ」と着る度に嘆いた。

茶道の初心者がよくやる失敗に、茶碗の湯を捨てる際きものの左袂
を建水に浸けることがある。今は免状を持つTさんも、このきもの
の袂を浸けたので、その部分だけピンク色が薄い緑色に染まった。

そこで数年前、Tさんはきものを木賊色に染め替えた。因縁を帳消
しにして、歳相応の品格ある色に生まれ変わった。

しかも、型染め作家・武村小平の帯にぴったり合っている。「締め
やすいし、この色柄は何にでも合うのよ」と、Tさんは帯を褒めた。

武村さんが信楽に工房を開き、初個展をかまーとの森で催したのは
6年前のことだ。彼の型染めは洒落ていて、たちまちファンを掴ん
だ。武村小平の作品を身に着けると女っぷりが三割上がると思った。

この感想に一番眼を輝かせて「欲しくなりました!着てみたい」と
言ったのは、武村小平の嫁だったけど。

今は、三男となる赤ちゃんを連れて手拭いの納品に来てくれる。当
社唯一のたぬきグッズの販売が、武村小平の型染め手拭いだから。


炉開き恒例の、ぜんざいをいただく。今年の北海道産の小豆と今朝
つきたての餅が、蒔絵碗に入っている。大阪の塩昆布も美味しい。

2020.1118