『毎日びわ湖マラソン』が68年の幕を閉じた。私にとって、昭和
57年から8年間、大津市に住んでいた頃の春の風物詩だった。
大会近くになると、郵便受けに応援用の赤い旗が入っていた。
テレビ放映でよく見かけるのは、走る選手と比べるために側道を走
ったり自転車で追いかけたりする人たちだ。二人の子どもが小さか
ったので、ふいに動いてぶつかると危険だ。いつもマンションの五
階の廊下から観て旗を振った。
「選手の速度ってメッチャ速いんだよ。テレビで見ているとそうで
もないように見えるけど」と解説する主人は、沿道を走った一人で
ある。当時は聞いて唖然とし、憮然とした。
しかし還暦を過ぎた今、20代の若者なら致し方なかろうと思える。
大津市から引っ越した時に0歳児だった次男は30代になった。昨秋
挙式予定が、新型コロナの影響で今年の6月へ、さらに来年の春へ
延ばすことにしたと言う。すでに前撮りした記念写真を見たので、
終わった気になっている。いつでもどうぞといった心境だ。
テレビの情報によると、こうして待機しているカップルは20万組に
及ぶらしい。予約している結婚式場も、来春からの新規受付はしな
い方針だという。
「次男が結婚式を挙げるまでは死ねない」が口癖いの、祖母の延命
に一役買うことになるだろう。
ふたりが帰るクルマの赤いテールランプが遠ざかっていく間に、密
度の濃かった2月を振り返り、充実感を覚えた。『スノームーン』
の翌日なので、夕方のように明るく青い光に照らされた夜だ。
2021.0228