家から15km離れた日野町は、城下町だけあって街並みの景観が良く、
歴史と文化のある町だ。
昼に予約した蕎麦屋『守貞』の近くに、骨董屋を見つけた。
染付の食器と古い裂地が主な品揃えだった。夫は蕎麦猪口を見てい
るが、20年前に骨董にハマった私は、染付はもう満腹である。
惹かれる裂地がある。ヒルカワさんに知らせなきゃ。東京から越し
て来ただけでも珍しいが、更に彼は、野良仕事などで酷使された前
掛けや手ぬぐいに継ぎをあてた、昔の襤褸(ボロ)が好きなのだ。
今春、私は彼にダーニングを教えた。くたびれたセーターなどに毛
糸や糸で補修することだ。娘さんと共に挑戦して、手を入れた古着
がますます愛おしくなったと報告してくれたヒルカワさんだ。
好みの裂地を発見するに違いない。話を聞いて、『かく福』の娘さ
んは「私も好きなんです」と奥から布地を出してきた。まだこの分
野の審美眼が発達していない私たち、特に夫は無言で見つめていた。
蕎麦と日本酒で上機嫌の夫と、『守貞』の敷地内の昭和感満載のレ
トロな展示品を見て回る。ブーフーウーの絵柄の水筒が懐かしい。
それから、春に見つけた城跡に連れて行く。堀の石垣と、白く大き
な花の桜の古木が印象的で、壊れかけた石段も風情があった。
中野城跡は、鎌倉時代初期から約400年間、日野の領主蒲生家の本
城だったところで、織田信長が本能寺の変で憤死した時、安土城の
妻妾一族をかくまい、明智軍を迎え撃とうとしたことで有名らしい。
『向町カフェ』で珈琲タイム。レジ横の野菜販売籠に"ズッキーニ
2本100円"があった。今夜はこれと鶏肉のトマト煮込みを作ろう。
2022.0608