ある方のご紹介で、京都大学を退職され湖南市の山中で『オータン
の森』を経営されている野村隆哉さんに会いに行くことになった。
先生の得意分野は木の熱処理で、「木を120℃に熱すると癖が分散
され、冷えるとそのまま固定するので強度が増す」というものだ。
一本の樹からは51%しか製材されなくて、更に37%に削られるから
廃材がたくさん出る。それをボクは、木の肌ざわりと比重の違いが
分かるよう動物の玩具を作るなどして活かしている。
次に手作りの音楽堂に案内してもらう。「先生が世に出した"竹炭"
"竹酢"の印税で建てられたのかな」と秘書兼手伝いの滝さんに聞
くと、「在職中だったから一銭も入らないんです」との答えだった。
人間工学的に作られた椅子は、長時間座っても疲れないらしい。
国の天然記念物"美し松"を熱処理して、生まれ変わったフクロウ
を前に、先生手製の黒豆のケーキとキーウィのデザートをいただく。
「君の店とコラボしようよ。何か売ってくれたまえ」とおっしゃる。
そこで先生考案の『九九の積み木』を拝見する。正四角形とそれが
2連~10連に繋がる長角形で、コンテナに一杯だ。「面を合わせると
七角形の成り立ちが分かるだろう?」丁寧な教材と感心する。だが、
強度な木はコストが高くなるからダメで、玩具は軽量でカラフルが
ウケル現代において、先生の商品は一般受けしないと思った。
先生の著書の「スリランカに滞在した時、けたたましい豚の声がし
た。市場に連れていかれる朝だ。驚くのは、その後を放し飼いにさ
れている牛、豚、犬、猫、鶏が鳴きながらついて行く光景だった」
が印象的で、生きとし生けるもの全てに共生感を持つ方だと察する。
2022.1108