山にミツバツツジや藤の花が咲いていたから、今年は花の咲く時期
が早いねと、道中、話しながら来た。床の花も、本来なら5月~6月
に咲くクロロウバイだ。ミステリアスな形と色は緑色の葉に映える。
『大円の真』の稽古をする。「袱紗の四方さばきがオカシイ」と、
先生から指摘された。もう何年も稽古しているのに、こんな初歩的
なことを注意されるなんて・・と心がくじける。
高橋義孝が稽古で「むなしゅうなる」時を書いていたが、まさに今、
この心境だ。こんな気持ちになってまで稽古する必要があるかしら。
どう対処していたっけ、高橋義孝は。
最初習った茶道教室は、家元直系の先生で厳しい教え方だった。
「こんなのやめてやる!」と憤慨した18歳の私に、同じ歳のミホち
ゃんは「すべて受け入れる。習い事ってそういうもの」と諫めた。
もう大人になった。稽古で気を抜いてはいけない。集中力が大事だ。
その夜、よしのり君から近況を知らせる動画とメールが入る。『変
化を楽しむことが生きるということ』という一文に動かされて、こ
こ数年で自分の変わったと思うことを書き送る。ま、それは歳のせ
いでもあるだろうけど、と付け加えた。
「是非、近いうちにお茶しましょう」と返信があって、終わった。
翌朝、ハタと気付いた。よしのり君は筋ジストロフィー症に罹って
いるのだった。その彼が"変化を楽しむ"と書くのだ。罹患して15
年も経てば歩けなくなるだろうに、杖を突いてはいるけど歩いてい
るし、声も大きく元気なんだもの。病気だったことを忘れていたわ。
心に残るセリフを吐く人が、たまに登場する。
2023.0418